- 事業者と直接交渉して問題を解決しようとしてもうまくいかない場合、訴訟しか取る道がないと思うかもしれません。しかし、中立的な第三者を活用すると、トラブルを解決する上で迅速で安価な選択肢となることがしばしばあります。この手続きは、裁判外紛争解決(alternative dispute resolution/ADR)と呼ばれ、消費者や事業者によって活用される事例が増えています。
オンラインでのADRの手続きは、ADRサービスの提供者に連絡し、オンラインで苦情の内容を申し立て、相手方にオンラインで応答してもらい、自宅にいながら出向く必要もなく、極めて小さな費用でトラブル全体を解決するというものです。
トラブルを抱えている場合に理解していただきたいのは、訴訟を起こす前にADRを利用することを要求しているサイトや、訴訟を起こす権利の放棄を要求しているサイトがあるという点です。まず、販売の条件を確認します。次に、地域の消費者保護機関に照会して、ADRを義務付けたり強制したりする条項が国内法上合法であるのか否かを確認します。裁判を提起する権利を放棄したくないのであれば、別の事業者と取引を行うことを検討してください。
トラブルの解決にあたりADRを利用するかどうか決める場合、以下の諸点を考慮します。
ADRの利用を選択する前にあらかじめ考えるべきことは何か?ADRを利用してみる前に、以下の事柄について考えをまとめておきます。
- どのような解決策が得られれば納得できるのか?
どのような解決策であれば納得できるかはっきり決める必要があります。例えば、返金してほしいのか、商品を取り替えてほしいのか、それ以外の対応を事業者側に望むのか、といったことです。
- 自力で事業者側と直接的に問題解決に当たろうとしたか?
通常、最初は直接事業者に連絡を取るのが最善の方策です。迅速かつ効率的な問題解決に役立つような内部の苦情処理制度を設けている事業者がしばしばあります。
- カード会社から支援は得られるか?
クレジットカードやデビットカードを使って商品やサービスを購入したのであれば、特別な保護を受けられる可能性があります。カードの明細書に丹念に目を通して、疑わしい金額請求に関する情報の有無を確認し、地域の消費者保護機関に連絡して、特別な法的保護が国内で適用されるかどうかを確かめます。
- 詐欺などの違法行為の疑いはないか?
この種の違法行為の疑いがある場合、econsumer.govの苦情情報提供フォームで苦情を申し立てるとともに、国内または地域の消費者保護機関や個人情報保護機関に連絡します。
どのようなオンラインADRを利用できるのか?調停や仲裁は、オフラインの世界では一般的な方法ですが、オンラインでもますます利用が可能になっています。自動交渉は、新しい形態のADRであり、オンライン環境の特徴をうまく生かした方策と言えます。
調停(mediation)とは?
調停では、中立的な第三者(調停人)が対話の促進を通じてあなたと相手方との問題解決を支援します。ただし、合意が成立するかどうかはあなたと相手方次第です。このADRに似た他の方法は、「補助つき交渉(assisted negotiation)」、「仲介(facilitation)」、「斡旋(conciliation)」などと呼ばれます。
仲裁(arbitration)とは?
仲裁は、中立的な第三者(仲裁人)の参加を得た上で、この仲裁人があなたと相手方から情報を集め、決定を下します。多くの場合、仲裁人の決定は当事者を拘束することが想定されています。
Automated Negotiation(自動交渉)とは?
自動交渉は、コンピューターを用いた手続きであり、主に金額面における紛争解決を図るために設けられています。手の内を見せない「せり」のようなシステムによることが多く、当事者はこのシステムを使い、相手方の提示内容を知らない状態で、合意に達するために金額の提示を行います。お互いの提示金額が十分に近くなり、コンピューター・プログラムが決着案を提案できるようになると、手続は終了します。コンピューターから出力された結果については、法的拘束力を持つ契約になりうるので、自動交渉の参加条件を注意して読むようにして下さい。
ADRの種類をどのように選べばよいか?
一部のオンライン販売業者は、取引に関し紛争が発生した場合に一定の種類のADRを利用することについて契約条件の中で定めています。契約条件を注意深く読んだ上で、購入の前にその内容を十分承知しておくよう心がけます。業者によっては、消費者が自分でADR手続を開始できるところもあります。トラブルの性質から考えて最適と思われるADRの種類を検討する際には、次の諸点を考慮すると、どのADRプログラムを使うか決める上で判断材料になります。
第三者に期待する役割は?
仲裁(Arbitration)では、第三者が決定を行います。調停(Mediation)の場合、第三者の役割は様々ですが、あなた自身が妥協案を提案し、解決策をみつけられるよう積極的に関わることが不可欠です。自動交渉(Automated Negotiation)では、コンピューター・プログラムによって自動的に決着が生み出されます。
特別な資格や専門知識を持った第三者が望ましいか?
仲裁人や調停人の場合、公的な資格を所持しているケースがあります。紛争の内容が高度に技術的なものであったり、特定分野の専門知識を要するものである場合、十分かつ適切な知識を持つ第三者を選ぶようにします。例えば、事業者側との間で事実関係に争いがある単純な紛争の場合は、公的な資格の必要性は低くなるかもしれません。いずれの場合でも、トラブルの元になっている事柄について経験がある第三者を選ぶと、解決に役立ちます。
(ADRの)結果に従う意思があるか?
仲裁(Arbitration)の結果が出た場合は、その結果に従う義務があり、相手の業者を裁判に訴えることはできません。ただし、国によっては、消費者側の訴訟請求権の放棄を認めていないところもあります。地域の消費者保護機関または個人情報保護機関に確認して下さい。
ADRサービスの提供者をどのように選べばよいか?
以下の事柄を検討します。
ADRサービス提供者は、行動規範やガイドラインを順守しているか?
ADRサービス提供者は、一連のガイドラインや行動規範を基準として行動しているケースがあります。この場合、通常は、サービス提供者が特定のルールを尊重することに自発的に同意していることになります。運用の詳細については、サービス提供者のウェブサイトで確認します。
ADRプログラムを利用するにはどれくらいの費用がかかるか?
無料で利用できる制度を設けているところもありますが、固定料金制であったり、支払能力に応じた料金設定を行っているところもあります。ADRの経費を誰が負担するのかについては、事業者やADRサービス提供者のウェブサイトを確認しておきます。
手続にはどれくらいの時間がかかるか?
大抵の消費者取引の場合、手続に要する期間は数日から数週間です。ただし、取引内容や苦情の性質が複雑な場合には、これよりも長い期間を要することがあります。もっとも、ADRの場合、訴訟提起よりも短期間で済むことがしばしばです。
母国語で手続を進められるか?
手続で母国語が使えるか否かを照会します。通訳を利用できる場合もありますが、その費用と通訳者のスケジュールについて確認しておく必要があります。
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どのような形で陳述を行うことになるか?
実際にやりとりをする手続については、単にeメールを交換するだけのものから、当事者全員がウェブ・カメラを介して「出席する」ものまであり、その形式には大きな幅があります。以下のことを考慮する必要があります。
1 時間の取り方 − 複雑な事案の場合、回答する前に考えをまとめるための時間的猶予が必要になることもあります。2 技術面 − 自宅からのeメール送信はいつでも可能ですが、テレビ会議への出席は可能ですか?
3 セキュリティ − 一般的に、普通のeメールで送られるメッセージには、特別なセキュリティ上の保護はありません。どの程度のセキュリティが必要かは、送信情報がどれくらい秘密を要するものかによって左右されます。小額紛争の場合、それほど機密保持を要しないケースが多いと思われますが、取扱に慎重を要する個人情報をeメールで送信するのは避けるべきです。取扱に慎重を要する個人情報が紛争そのものの対象となっている場合、ウェブサイト上で安全に情報を送信できるADRプログラムの利用を検討します。
- ADRサービス提供者は、個人情報の取扱いを明示しているか?
サービス提供者が個人情報の取扱いや使途を明記しているかどうかについて検討します。サービス提供者によっては、紛争の結果について名前を伏せて公表することについて、あなたの同意を求めることがあります。こうした情報は、他の消費者にとって、特定のサービス提供者を利用するかどうか検討したり、似たような紛争についてどのような解決がありうるのか情報を入手したりする上で、役に立つことがあり ます。
(出典)OECD 「Resolving E-Commerce Disputes Online: Ask the Rights Questions About ADR(オンライン電子商取引の紛争解決 − ADRに関する適切な質問項目)」 OECDの消費者政策のホームページ(
www.oecd.org/sti/consumer-policy)に掲載されてい ます。 |